世界初のスチームクラッカー電気加熱炉が稼働、化学の脱炭素化前進

化学大手の独BASF、サウジ基礎産業公社(SABIC)、プラント大手リンデは17日、ス
チームクラッカーの熱源に再生可能エネルギー電力を投入する共同プロジェクトで、
加熱炉の実証設備が完成したと発表した。世界初の大型スチームクラッカー電気加熱
炉で、今後行う実証を経て商業利用が実現すれば、化学産業は脱炭素化に向け大きく
前進できる見通しだ。
スチームクラッカーは基礎化学品の生産で中心的な役割を果たす設備で、炭化水素を
オレフィン(高分子化合物)と芳香族に分解する。分解に当たっては約850度の高温
が必要で、これまでは化石燃料を燃やして確保してきた。
3社は西南ドイツのルートヴィヒスハーフェンにあるBASFの統合生産拠点内に電気加
熱炉を設置した。再生エネを用いて加熱し、エチレン、プロピレンなどの高分子化合
物を製造する。化石燃料を用いる従来の技術に比べスチームクラッカーの二酸化炭素
(CO2)排出量を90%以上、削減する。
実証炉には直接加熱式のものと間接加熱式のものの2つを用意した。1時間に計4ト
ンの炭化水素を処理できる。
3社は2021年3月、同プロジェクトを実施することを明らかにした。BASFとSABICは化
学プロセス開発分野のノウハウを持ち寄るとともに資金を拠出。リンデは設計、調
達、建設を担当し、開発に成功した場合は同技術を「STARBRIDGE」の商標で市場投入
する。プロジェクトには独経済・気候省が「製造業脱炭素化」プログラムから1,480
万ユーロの助成を行っている。

上部へスクロール