ライフサイエンス大手の独バイエルは23日、自然由来の農薬開発に取り組む英ス
タートアップ企業アルファバイオ・コントロールから有機殺虫剤の独占販売権を取
得することで合意したと発表した。開発と認可手続きが順調に進めば、2028年に市
場投入する意向だ。
アルファバイオはケンブリッジに本社を置く研究開発企業で、11年に設立された。
自然を活用した農業向けのソリューション開発を行っている。
同社はキャベツ茎ノミハムシなどの甲虫類に効果のある殺虫物質を発見し、現在、
製品開発を進めている。キャベツ茎ノミハムシは英国その他の欧州に広く分布。菜
種に大きな被害をもたらす。
同物質をベースにアルファバイオが開発する殺虫剤は菜種のほか、穀物にも用いる
ことができる。バイエルは今回、この農薬の独占販売権を取得した。
両社は以前から協業しており、19年にはアルファバイオが開発した生物由来の殺虫
剤「プリッパー」の販売権をバイエルが取得した。フリッパーはオリーブオイルの
生産に伴って発生する廃棄物を原料に生産される。害虫の細胞・栄養摂取機能を破
壊するのが特徴。散布者のほか、農作物の花粉を媒介するミツバチなどの動物や、
有益な節足動物には害をもたらさない。残留性も低い。
有機農薬は化学農薬に比べ割高なものの、環境・健康意識の高まりを背景にニーズ
が増えている。バイエルはデジタル技術を駆使した精密農業と組み合わせること
で、コスト効率を高められると判断。有機農薬の売上高を35年までに15億ユーロ以
上とする目標だ。
同社は自社の農薬の投入に伴う環境負荷を、収穫量を落とすとなく30年までに30%
軽減する目標を掲げる。発がん性のリスクが指摘され巨額訴訟に発展した同社製除
草剤「グリホサート」への風当たりが強まっていることが背景にある。