メルセデスの上位モデル重視戦略に黄信号

高級乗用車大手の独メルセデスベンツが進める上位モデルの重点強化戦略が失速し
ている。上位モデルの販売が振るわないのだ。8日のバーチャル株主総会に出席し
たデカ・インベストメントのアナリストは「期待と現実が大きく食い違っている」
と批判した。『南ドイツ新聞』が報じた。
メルセデスは2022年、同社のモデルを高級度に応じて3段階に区分したうえで、上
位段階のモデルを重点強化する方針を打ち出した。市場環境が悪化しても高い収益
力を安定的に維持できるようにする狙いがある。オラ・ケレニウス社長は「世界で
最も羨望される車を造る」と明言。「ラグジュアリー」という表現を頻用し、高級
オフロード車「Gクラス」を仏エルメスの超高級バッグ「バーキン」にたとえてき
た。
メルセデスが導入した3段階の区分は最高級の「トップエンド・ラグジュア
リー」、販売規模が最も多い「コア・ラグジュアリー」、同社のなかでは価格が最
も低い「エントリー・ラグジュアリー」。このうちトップエンドの販売比率を増や
し、エントリーは減らす考えだった。
だが、トップエンドの第1四半期の販売台数は前年同期を27%も下回った。ハラル
ド・ヴィルヘルム取締役(財務担当)は「市場は低調であり、トップエンド製品も
その影響を免れない」と株主に理解を求めた。だが、どんなに厳しい市場環境下で
も堅調な販売を維持するというのがトップエンドの本来の位置付けであり、現実と
期待の乖離は明らかだ。
トップエンド不振の背景には最重要市場の中国で販売が思わしくないという事情が
ある。特に同社が注力する電気自動車(BEV)は現地消費者のニーズに見合ってい
ないこともあり、旗艦モデル「EQS」では値下げを余儀なくされた。
より深刻なのは高インフレを背景に世界市場で中価格帯のニーズが増えていること
だ。メルセデス車の平均販売価格は部品不足による供給不足という追い風もあり19
年の5万1,000ユーロから23年には7万4,000ユーロへと大きく上昇したものの、今後
は頭打ちとなる可能性がある。

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