中国製電動車のEU輸入関税引き上げ、独メーカーで報復の痛手大きく

中国製の電動車が不当な助成措置で欧州市場に低価格で輸出されているとして欧州連
合(EU)が相殺関税を導入し、中国が報復措置を発動した場合、欧州の自動車メー
カーで深刻な影響を受けるのは基本的にドイツ勢に限られる。フランスやイタリアな
どその他の国のメーカーと異なり中国市場への依存度が極めて高いためだ。英国の調
査会社JATOダイナミクスに作成依頼したデータなどをもとに『フランクフルター・ア
ルゲマイネ』紙が14日付で報じた。
それによると、第1四半期に中国で販売された内燃機関車の台数はフォルクスワーゲ
ン(VW)で68万6,281台、BMWで16万492台、メルセデスで16万1,431台だった。一方、
フランス車とイタリア車が中心のステランティスは1万9,286台にとどまった。仏ル
ノーは電動車を含め中国で車両を販売していない。
電気自動車(BEV)でもVWが4万1,270台、BMWが2万3,783台、メルセデスが1万1,293台
に上ったのに対し、ステランティスは0台だった。このため中国が自国市場で欧州車
に報復措置を発動した場合、ドイツ車だけが大きな痛手を受ける。
ただ、電動車の重要原料の欧州向け供給を中国が仮に制限した場合は仏伊メーカーも
深刻な事態に追い込まれる見通しだ。BMWのオリファー・チプセ社長はこの可能性を
指摘し、相殺関税要求は軽率だと批判した。
独自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は、中国市場で車両を大量に
販売できなくなれば雇用を維持できなくなるだけでなく、DX(デジタルトランス
フォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)の資金も確保できな
くなると指摘。「自由で公正な通商」の維持を訴えた。
中国車が欧州市場に大量に流入しているという主張については、チプセ氏が反論を展
開した。欧州で2023年に販売された電動車の約20%が中国から輸入されたことは事実
だとしながらも、その半分以上は中国メーカー以外の製品だと指摘。ドイツ市場での
中国車のシェアも0.8%に過ぎないとして、中国車が「氾濫しているなどと言うこと
はできない」と断言した。新規市場参入はそもそも難しく、一朝一夕にはいかないと
している。

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