蘭国有送電網会社テネットの独送電網をドイツ政府が買収する計画が実現しない可能
性が出てきた。買収交渉の開始から1年以上が経つにもかかわらず合意の見通しが立
たないためで、テネットは16日、独政策金融機関KfWとの交渉と並行して他の投資家
への売却ないし新規株式公開(IPO)を検討すると発表した。
テネットは独エネルギー大手エーオンの送電網を2010年に買収し、同国市場に参入し
た。独子会社テネットTSOが持つ送電網は北海からオーストリア国境まで国土を縦
断。国内送電4社のなかで最も大きい。
欧州では脱炭素化に向け、化石燃料の使用を縮小・廃止し、再生可能エネルギー電力
を増やす動きが加速している。電力需要の大幅拡大に対応するため、各社は送電網の
拡充に取り組まなければならない。
だが、そのコストは巨額であることから、蘭政府とテネットはテネットTSOをドイツ
に売却する方向でKfWと交渉してきた。ドイツの送電網拡充にオランダの税金を投入
することへの批判があるためだ。
独政府は国内送電4社すべてに出資することを目指しているとの観測もあり、交渉は
成立が確実視されていた。内部情報として『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が
報じたところによると、昨年時点ではKfWがテネットTSOを200億〜250億ユーロで完全
買収することで合意が成立しかかっていたという。
だが、コロナ禍対策の起債枠をGX基金に転用した独政府の措置を違憲とする判決を連
邦憲法裁判所が11月に下したことで買収資金確保のメドが立たなくなっているもよう
だ。
オランダでは極右の自由党(PVV)など4党が連立政権の樹立で合意したことを16日に
発表した。テネットはこれを踏まえて、今回の声明を発表した可能性がある。