ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候相は22日、カーボンフットプリントの少
ない素材の市場を育成するための構想「気候に優しい素材の先導市場
(Leitmaerkte fuer klimafreundliche Grundstoffe)」を発表した。従来製法で
作られた製品に比べ割高な気候配慮型素材の需要を公共入札や投入比率義務化を通
して喚起し、中長期的に助成不要の自立的な市場へと発展させることが同構想の狙
い。欧州連合(EU)レベルでの実現を目指す。
炭素中立実現に向けた政府の政策はこれまで、水素製鉄工場などへの補助金交付
や、従来型の技術で生産する競合製品との差額を国が補償する「炭素差額契約
(CCfD)」など、供給サイドの強化に集中していた。だが、それだけでは自立的な
市場が立ち上がらないことから、経済・気候省の諮問委員会は需要サイドの強化に
焦点を当てた先導市場構想を提言。ハーベック氏はこれを踏まえ今回の発表を行っ
た。
先導市場の立ち上げに向けてはまず、気候に優しい素材の定義を産学などの意見を
踏まえて明確化。そのうえで対応する製品のラベルや表示制度を整える。ドイツ国
内でまとめた定義・表示制度などの案は、欧州委員会に新設される作業部会に提出
する意向だ。
公的支出はドイツおよびEUの国内(域内)総生産(GDP)の約15%を占める。この
ため、例えばインフラ入札で気候に優しい鉄鋼やセメントを一定比率、投入するこ
とを応札条件に設定すれば、そうした素材の需要と供給がともに生み出されること
になる。公共入札以外でも気候に優しい素材を一定比率、投入することを義務化す
れば同様の効果が生まれる。
今回発表された構想では、エネルギー集約型の製品である鉄鋼、セメント、基礎化
学品(アンモニアとエチレン)を気候に優しい素材とすることが明記されている。
これらの素材は独製造業の重要な製品であるうえ、産業プロセス・バリューチェー
ンの起点にも当たることから、選定された。