高級乗用車大手の独メルセデスベンツは8日、本社所在地のシュツットガルト市ウン
ターチュルクハイム地区にある拠点で電動車用電池の研究・開発(R&D)コンピテン
スセンター「eキャンパス」を開設した。セル内部での化学反応(電池化学)を最適
化するほか、量産技術のノウハウを習得。走行距離や充電時間などで高い性能を持つ
モデルを投入できるようにするとともに、電池コストを30%以上、引き下げる狙い
だ。
eキャンパスの建設計画は2段階に分かれており、今回は第1段階に当たる「産業セ
ル・ラブ(Industrial Cell Lab)」を開所した。同ラブは、セル材料の組み合わせ
と設計の最適化に取り組む開発・評価施設「ケミストリー・ラブ」などの既存拠点を
補完するもので、プロトタイプのセルを産業規模で生産・検査する。開発向けに年に
数万個を生産できる。マルクス・シェーファー取締役(研究担当)は『フランクフル
ター・アルゲマイネ』紙に、「セル生産プロセスは電池の性能をとてもとても大きく
左右する。このためわが社はセルの設計と化学だけでなく、産業生産のノウハウもマ
スターしなければならない」と狙いを説明した。
自社モデルに搭載する電池の製造はこれまで同様、寧徳時代新能源科技(CATL)など
の外部企業に委託する。ただ、電池化学に関する深い知見と量産のノウハウを持って
いないと、自らが求める高品質のセルを確保できないことから、eキャンパスを開設
した。
建設計画の第2段階では試験センターを設置する。年末までの完成を見込む。
同社は特に、コバルトを使用しない正極とシリコン混合材ベースの負極を用いたリチ
ウムイオン電池と、全個体電池の研究・開発に注力する。