化学大手の独BASFが電池材料事業への投資額を引き下げる可能性が出てきた。世界
の多くのメーカーが生産能力を拡大しているなか、肝心の電動車の需要が思ったほ
ど伸びていないためだ。広報担当者は「わが社の既存の生産能力は電池材料市場で
成長するのに十分だ。現在の市場環境では今後の投資が厳しく吟味され新たに評価
される」と明言した。経済紙『ハンデルスブラット』が報じた。
調査会社ブルームバーグNEFによると、世界の電動車販売台数は2020〜23年の4年
間、年率68%の急成長を遂げた。24〜27年の4年間はこれが21%へと大幅に低下す
る見通し。電池材料はすでに供給が過剰気味になっており、業界大手であるベル
ギーのユミコアは5月に今年の業績予測を引き下げた。
BASFは電池正極材の有力メーカーで、これまでの計画では電池化学事業に30年まで
に最大45億ユーロを投資することになっている。ただ、需要の伸びが想定を下回れ
ば、減額する可能性が高い。
正極材の原料であるニッケルとコバルトの総合精錬施設をインドネシアに設置する
方向で仏鉱山大手エラメットと共同で進めてきた検討はすでに打ち切った。カナダ
の鉱山会社ウエルス・ミネラルズがチリで進めるリチウム事業への参加に向け進め
てきた交渉からの撤退したもようだ。
同社は2年前、北米市場向けに正極材を供給するため、カナダのケベック近郊に工
場用地を確保した。建設工事はいまだに始まっていない。同紙は計画の見直し作業
が行われていると報じた。