独エネルギー大手ユニパーは27日、北海に面したクルムヘルンに水素貯蔵の実証プ
ラントを開設したと発表した。岩塩空洞にグリーン水素を貯蔵。採算のめどが立て
ば拡張して商業運営を行う。経済の脱炭素化に伴い不安定になりやすいエネルギー
需給の調整に寄与すると期待されている。
同社はクルムヘルンで「ハイドロジェン・パイロット・カヴァーン(HPC)」とい
うプロジェクトを2年間、行う。まずは9月24日から機密性テストを実施。その後、
当局の承認を得てグリーン水素の注入を開始し、様々なサイクルで注入・抽出を行
う。貯蔵容量は50万ノルマル立方メートル。試験運用を通して水素が機器・材料に
もたらす影響、貯蔵した水素の質の変化、熱力学と岩石力学上の問題点を調べる。
採算のめど立った場合は3〜5年をかけて空洞を拡張。まずは250ギガワット時
(GWh)の水素を貯蔵できるようにする。同貯蔵施設はユニパーが水電解槽とアン
モニア輸入ターミナルを設置するヴィルヘルムスハーフェン港に比較的近いうえ、
ドイツで計画されている水素中核輸送網に接続することから、同国の水素経済で重
要な役割を果たす見通しだ。
岩塩空洞は水素の貯蔵に適している。ドイツには北部と中部に適地が多く、欧州の
潜在的な貯蔵容量の40%以上を占めるという。
ユニパーは独南部でも水素貯蔵事業を行う意向で、現在「ハイストレージ」という
研究プロジェクトを進めている。多孔質岩石層を利用した既存の天然ガス貯蔵が水
素貯蔵に適しているかどうかを調査する。多孔質岩石層が水素貯蔵に適しているか
どうかは現時点で定かでない。エネルギー経済研究所(EWI)のヤンユルゲン・
コップ氏は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に「さらなる調査が必要だ」と
述べた。
多孔質岩石層はフランスからオーストリアにまたがるアルプス北部のモラッセ盆地
全域にあることから、ハイストレージでポジティブな結果が出れば、欧州の水素貯
蔵容量は大幅に拡大できる見通しだ。