中国の過剰生産能力、化学品でも問題に

鉄鋼や太陽光パネル、電気自動車(BEV)などで世界経済の大きな問題となってい
る中国の過剰生産能力は基礎化学品にも当てはまるもようだ。市場調査会社ICISと
共同で実施したデータ分析をもとに経済紙『ハンデルスブラット』が報じたもの
で、欧州はそのしわ寄せを特に強く受けているという。
中国では2010年代末まで続いた経済の急成長を背景に基礎化学品の生産能力が大幅
に引き上げられた。同国の旺盛な需要に供給が追い付かなかったためだ。だが、現
在は中国経済が構造不況に陥っていることもあり、生産能力は過剰となっており、
輸出が増加。化学品と樹脂の23年の輸出高は16年の2.5倍の2,600億ドルに達した。
同国では石油化学コンビナートの新設が今後も行われることから、生産能力は一段
と増えると予想される。
国内市場でさばけない製品が大量に輸出されることから、世界全体で過剰生産能力
を抱え込んでいる。この結果、化学品の価格は下落。需要の低迷は追い打ちをかけ
ている。
中国からの化学品輸出は特にラテンアメリカと欧州向けが増えている。世界銀行に
よると、中国の同輸出に占める欧州の割合は16年の約20%から21年には25%に拡大
した。22年以降は現時点でデータがないものの、さらに上昇したと推測されるとい
う。
欧州向けの輸出が増加した背景には、同地の生産コストが割高なことがある。特に
ロシアのウクライナ侵略後は天然ガスと電力の価格が高止まりしており、状況は一
段と悪化した。
ドイツでは特に基礎化学品を手がけるBASFが直撃を受けている。ルートヴィヒス
ハーフェン本社工場は2年前から赤字が続く。すでに一部の施設で生産を停止した
ものの、今秋には一段と踏み込んだ削減プログラムを公表する予定だ。同社以外で
は、セラネーズが西部のハム市ウエントロップ地区にある工場で生産能力を削減し
た。トリンセオは北部のシュターデ工場を閉鎖する。
ICISによると、すでに閉鎖されたか閉鎖が計画されている基礎化学品工場は世界全
体で40カ所に上る。そのうち半数以上を欧州連合(EU)と英国が占めるという。

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