独化学工業会(VCI)は29日、イノベーション立地としての同国の地盤が沈下してい
ると警鐘を鳴らした。化学・製薬業界の研究・開発(R&D)投資は増加傾向が続いて
いるものの、過剰規制や緩慢な認可手続き、複雑な助成制度を嫌ってR&D活動を国外
で行う動きが強まっている。VCI研究部会のトーマス・ヴェッセル部長は「他の国で
はコストが低く、公的助成プログラムが優れ、規制は少ない。‘メイド・イン・
ジャーマニー’はアイデアではトップだが、これらのアイデアで金が稼がれるのは国
外だ」と危機感を表明した。
独化学・製薬業界のR&D投資額は昨年155億ユーロとなり、前年を4%上回った。今年
も2%増の158億ユーロに拡大する見通し。長期的にみても、コロナ禍初年の2020年に
減少したのを除き、増加が続いている。従業員に占めるR&D要員の割合は約10%で安
定している。
R&D投資の拡大をけん引しているのは製薬業界で、23年は前年を5%上回る99億ユー
ロとなった。24年も4%増えて102億ユーロとなる見通しだ。
一方、化学業界は伸び悩んでおり、23年は1%増の56億ユーロにとどまった。24年は
横ばいにとどまる。国内のコスト高やエネルギー価格高騰に伴う収益力の低下が背景
にある。
VCI加盟の化学・製薬会社を対象に実施したアンケート調査では、ドイツ国内のR&D投
資額を今年「増やす」とする回答が25%となり、「減らす」(27%)を2ポイント下
回った。一方、国外のR&D投資額を「増やす」は33%を記録。「減らす」は8%にとど
まった。
全世界の化学・製薬業界のR&D投資額(23年)を国別でみると、米国は全体の51%を
占め、ダントツの1位だった。これに中国が13%、日本が7%で続く。ドイツは5%で4
位を保ったものの、同比率は低下しているという。
ドイツの地盤沈下は特許分野でも鮮明だ。両業界の特許申請に占める同国の割合は22
年に7.2%となり、12年の12.5%から5.3ポイントも低下した。一方、中国は5.8%か
ら17.5%へと急拡大。韓国も1.9ポイント増えて7.6%となった。日本は3.5ポイント
減の17.7%、米国は5.2ポイント減の29.7%だった。