VWが国内工場閉鎖も、低価格BEVの欠如など響く

自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)がコスト削減の強化に向け、ドイツ本国での
工場閉鎖や整理解雇など同社としては異例の措置を検討している。経営陣が従業員代
表の事業所委員会に2日、伝えた。VWグループ全体の事業所委員長であるダニエラ・
カバロ氏は「(経営陣の)これらの計画は雇用、事業拠点、労使協定に対する攻撃
だ」と述べ、労組とともに徹底抗戦する意向を表明した。
VWでは昨年、収益力が低い主力のVW乗用車ブランドで「アクセレート・フォワード|
ロード・ツー6.5」という名の収益力強化プログラムが取り決められた。2026年まで
に利益を100億ユーロ増やし、売上高営業利益率で恒常的に6.5%を達成できるように
するというもので、24年だけで利益を最大40億ユーロ増やすことを目指していた。
だが、最近になって同プログラムだけでは競争力を保てないことが判明。経営陣は、
速やかに対策を打たなければドイツの全工場閉鎖に追い込まれる恐れもあるとして、
事業所委に今回、追加措置を提案した。同委によると、経営陣は◇国内の大きめの完
成車工場を少なくとも1カ所、および部品工場1カ所を閉鎖する必要がある◇これに伴
い29年までの雇用を保障した労使協定を解約する――などを伝えたという。コスト削
減幅を40億ユーロ拡大する考えのようだ。
オリファー・ブルーメ社長は「経済環境は一段と厳しくなった。(中国からの)新し
い事業者が欧州に押し寄せている。これに加えて、とりわけドイツの産業立地競争力
がさらに低下しているという事情がある。この環境下で我々は企業として今、決然と
行動しなければならない」と述べたという。ドル箱市場の中国で電動車の普及が急速
に進み、同分野で競争力の低いVWの利益が減っていることも大きな痛手となってい
る。
VWが国内工場を閉鎖したことはこれまでなかった。資本側代表の監査役2人を地元
ニーダーザクセン州政府が派遣しているためだ。州政府は有権者でもある従業員の解
雇を是が非でも回避したいと考えており、被用者側代表の監査役との協調を重視。人
員削減はこれまで、希望退職や高齢者パートタイムなど穏当な方法を通して行われて
きた。経営陣の今回の提案はこうした慣例に反することから、従業員の反発は大き
い。
カバロ氏は業績悪化の責任は従業員ではなく経営陣にあると明言。手頃な価格の電気
自動車(BEV)モデルがVWグループにまったくないことや、現在需要が増えているハ
イブリッド車(HV)の製品も少ないことを具体例として挙げた。
ニーダーザクセン州のシュテファン・ヴァイル州首相は今回の問題について、工場閉
鎖が決まったわけではないと指摘。今後の協議では経営陣の提案だけでなく、考えら
れるあらゆる可能性が話し合われなければならないとの立場を表明した。

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