食肉大手テンニースが競合から拠点買収、牛肉でも最大手に

独食肉加工最大手テンニースは5日、蘭同業ヴィオン・フード・グループがドイツ
に持つ牛肉・牛皮加工拠点6カ所を取得することで合意したと発表した。ヴィオン
は独市場からの撤退方針を6月に表明。ヴィオンが仮に拠点を閉鎖すると家畜を食
肉加工場まで運ぶ距離が数百キロに達するケースも数多く発生することから、畜産
農家の間には懸念が広がっていた。テンニースはそうした事態を避けるために今回
の取引に応じたとしている。買収金額は非公開。状況をから判断して、低価格とみ
される。
同社が取得する拠点のうち5カ所はドイツ南部にある。食肉市場の専門家が経済紙
『ハンデルスブラット』に伝えたところによると、ヴィオンが手放す拠点と当該地
域の食肉バリューチェーンを長期的に維持する能力があるのはテンニースしかない
という。テンニースは「何世代にも渡り家族経営で運営されてきたドイツの農業の
維持を特に考慮すると、南ドイツにある牛肉加工構造を将来性のあるものとし、農
家に将来の見通しを与えることは重要だ」との声明を出した。
同社は独豚肉加工市場でダントツの1位。今回の取引が成立すると牛肉分野でも首
位に躍り出る。
食肉加工業界が置かれている状況は厳しい。肉消費の減少が続いているためだ。中
東欧の出稼ぎ労働者を不当に低い賃金と劣悪な環境下で働かせていたことが大きな
社会問題となり、賃金などの待遇改善が進んだこともあり、コスト高を理由に加工
場を閉鎖するケースは少なくない。
ヴィオンはこうした状況を受け独市場から撤退する。ベネルクス市場に経営資源を
絞り込む意向だ。

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