アウディのブリュッセル工場、ニオなど中国勢が買収に関心

独自動車大手アウディが売却を検討するベルギーのブリュッセル工場に対し、複数の中国競合が関心を示しているもようだ。社内情報として20日付『南ドイツ新聞』が報じたもので、上海蔚来汽車(ニオ)の派遣団はすでに視察を行ったという。背景には中国から輸入する電気自動車(BEV)に追加関税を上乗せする方針を欧州連合(EU)の欧州委員会が打ち出していることがある。追加関税が正式決定されると、中国メーカーは欧州市場での価格競争力が低下することから、現地に生産拠点を確保し不利益を回避する狙いだ。
同関税をめぐっては現在、欧州委と中国政府が交渉を進めている。19日には同委のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)と中国の王文濤商務相がブリュッセルのEU本部で会談。追加関税が正式に適用され大規模な貿易戦争に発展するのを避けるため、交渉を継続することで一致した。中国のBEVメーカーがEUに輸出する製品に最低価格を設けるという案を軸に協議を進める。
ただ、交渉がまとまらなければ最大36.3%の追加関税が正式適用される可能性があるため、中国メーカーはEUないしEU関税同盟加盟国での生産拠点確保に動いている。比亜迪汽車(BYD)はハンガリー南部のセゲドとトルコ西部のマニサに工場を建設する。奇瑞汽車(チェリーもスペインのバルセロナで日産自動車の工場を買収し、欧州生産に乗り出す。零跑汽車(リープモーター)は提携先ステランティスのポーランド工場ですでに自社モデルの生産を開始した。
中国メーカーがアウディのブリュッセル工場を買収した場合は、全ての部品を輸送し現地で組み立てるコンプリート・ノックダウン(CKD)方式が採用されるとみられる。欧州でサプライヤーを探すのは時間がかかるうえ、同工場は敷地が狭くプレス工場を設置できないためだ。既存工場でCKD生産を行えば工場新設に比べコストを節約できるというメリットもある。

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