ドイツ東部のブランデンブルク州で22日に州議会選挙が行われ、国政と同州でともに
与党第1党である中道左派の社会民主党(SPD)が30%超の得票率を獲得し、これまで
に引き続きトップを堅持した。同党のショルツ首相が舵を取る国政は不手際が多く強
い逆風となっていたにもかかわらず、得票率を大きく伸ばした。東部諸州で勢力を一
段と強めている極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第1党となることに危機
感を持つ有権者の票を取り込むことに成功。AfDを僅差で抑えた。
SPDの得票率は前回(2019年)を4.7ポイント上回る30.9%に拡大した。伸び率はAfD
(5.7ポイント増の29.2%)に近い水準だ。1月設立の新党ザーラ・ヴァーゲンクネヒ
ト同盟(BSW)は13.5%を獲得し、いきなり第3党に躍り出た。
そのほかの主要政党はすべて得票率を大きく落とした。中道右派のキリスト教民主同
盟(CDU)は3.5ポイント減の12.1%、環境政党・緑の党は6.7ポイント減の4.1%、左
翼党は7.7ポイント減の3.0%、自由民主党(FDP)は3.3ポイント減の0.8%となって
いる。
投票率は前回の61.3%から72.9%へと11.6ポイント上昇し、ダントツの過去最高を記
録した。AfDの人気上昇などを背景に今回の選挙が重要な意味を持つと目されるよう
になったことから、有権者のモチベーションが大幅に高まったという事情がある。
その恩恵を受けたのはSPDとAfD、BSWで、3党は前回選挙で投票しなかった有権者の票
を大量に獲得した。AfDとBSWには既存政党に不満を持つ人の票が流れ込んだ。
SPDには、AfDが第1党となり極右の勢いがこれまで以上に強まることを懸念する有権
者の多くが投票した。前回選挙で緑の党やCDU、左翼党に投票した人も今回はSPDに票
を投じている。今月上旬に行なわれた東部2州(テューリンゲンとザクセン)の州議
選ではAfDがそれぞれ第1党、第2党となっており、大きな危機感が共有されていた。
そうした有権者の票がCDUではなく、SPDに向かったのはディーター・ヴォイトケ州首
相(SPD)の人気と選挙戦略によるところが大きい。選挙前週カ月の各種有権者アン
ケート調査を見ると、7月上旬時点では両党の支持率が19%で並んでいた。SPDにとっ
てはショルツ政権の不人気が大きな足かせとなっていた。
ただ、ヴォイトケ氏の人気自体は州内で極めて高いことから、SPDはこれを活用して
選挙戦を展開し、支持率を急速に引き上げていった。選挙の直前には、得票率がAfD
を下回った場合は州首相を辞任すると同氏自らが明言。SPDは18〜19日に行われたア
ンケートで支持率が27%となり、AfDをなお1ポイント下回っていたものの、選挙では
逆転に成功した。
議席を獲得した政党はSPD、AfD、BSW、CDUの4党だけだった。各党の議席数はSPDが
32、AfDが30、BSWが14、CDUが12。総数は88で、過半数ラインは45となっている。SPD
が過半数議席に支えられた政権を樹立するためにはBSWと連立を組む以外に選択肢が
ない。
BSWは左翼党から脱党した有力政治家のザーラ・ヴァーゲンクネヒト氏が中心となっ
て設立した政党。社会的弱者を重視するという点で伝統的な左派の系譜に連なるもの
の、移民の制限を求めたり急速な脱炭素化政策を批判する点では右派色が強い。ウク
ライナ支援には批判的であり、連立の壁は高い。ヴォイトケ氏は23日、政権協議に向
けBSWのほかCDUとも話し合う考えを示した。
CDUが中心となって次期政権の樹立を模索するテューリンゲン、ザクセン両州ではBSW
が政権入りする可能性は低く、少数派政権となる公算が高くなっている。