独複合企業ティッセンクルップは水素製鉄プロジェクトを取り止める可能性があるも
ようだ。経済紙『ハンデルスブラット』が社内文書をもとに報じたもので、鉄鋼子会
社ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパ(TKSE)はプロジェクトの停止を含む
様々なシナリオを検討しているという。TKSEの広報担当者はロイター通信の問い合わ
せに、「それぞれの枠組み条件下で何が最善で経済的に最もサステナブルな解決策な
のかを当社はテクノロジーオープン、かつ結果ありきでなく常に検討している」と回
答。現在の枠組み条件下でプロジェクトを実現することは可能だと強調した。言外に
は、枠組み条件が変われば停止する可能性が含まれている。
ティッセンはコークスの代わりにグリーン水素を100%還元剤として用いることがで
きる直接還元鉄(DRI)製造施設をデュースブルク工場に設置して同拠点の脱炭素化
を図る「tkH2スチール」というプロジェクトを計画している。投資額は30億ユーロ。
そのうち20億ユーロを国と地元ノルトライン・ヴェストファーレン州の補助金で賄う
ことがすでに確定している。
ドイツでは計4社が補助金を受けて水素製鉄プロジェクトを行う計画となっている。
そのうち唯一の外資であるアルセロールミタルは、適切な環境が整わなければ投資の
最終決定を下せないとの立場を公式表明しており、実施しない可能性を排除していな
い。背景には、電力コストが割高な同国内でDRIを生産するより輸入した方が製造コ
ストを低く抑えられるという計算がある。