ドイツの立地魅力度、国外からみても低下

ドイツの経済立地は国内だけでなく国外からみても魅力が低下していることが、在外
ドイツ商工会議所(AHK)のアンケート調査で分かった。同国では2000年代前半〜中
盤の構造改革以降、競争力の向上に向けた本格的な取り組みが行われていないうえ、
ロシアのウクライナ侵略後はエネルギーコスト高が進み、同国の強みである製造業は
素材メーカーを中心に打撃を受けている。グリーン水素など脱炭素化に向けた取り組
みも先行き不透明感が強く、環境・人権規制の強化は企業のノンコア業務をいたずら
に増やし競争力強化に十分な労力を振り向けられない状況だ。独商工会議所連合会
(DIHK)のフォルカー・トライヤー貿易部長は「わが国の経済立地の魅力向上に政治
が再び集中的に取り組むべき時だ」と強く訴えた。
アンケートはAHK加盟企業およそ1,250社を対象に8月末から9月中旬にかけて行われ
た。製造業が43%と最も多く、これにサービス業が35%、流通業が12%、建設業が
6%で続いた。回答者のうち独企業の現地法人ないし事務所は53%で、残り47%は現
地企業と非ドイツ系の国際的な企業が占める。ドイツ系の企業でも駐在員は本国と異
なる現実に直面していることから、本社勤務とは違った視点を持つことが多い。
アンケートで「経済立地ドイツの過去5年間の国際的なイメージをどう評価します
か」と質問したところ、「悪化した」との回答は48%に達した。「改善した」は半分
以下の23%にとどまっており、外からみたドイツの評価は大幅に悪化している。トラ
イヤー氏は「外からの視線は旧態依然たるわが国の姿を明るみに出すものだ」と指摘
した。
回答企業を地域別でみると、「悪化した」が最も多かったのは中華圏(グレーター・
チャイナ)で76%に達した。これにユーロ圏が57%、中国以外のアジア太平洋が
56%、北米と欧州連合(EU)以外の欧州がそれぞれ52%で続いた。これらの地域はい
ずれも経済活動・競争が活発であるため、ビジネスパーソンは産業立地競争力の変化
に敏感に反応するもようだ。
中東・アフリカと中南米はともに22%にとどまった。これらの市場ではドイツ企業の
優位性が保たれているとみられる。
「外国企業に対独投資を推奨しますか」との質問では「はい」が43%に上った。「い
いえ」は25%だったものの、トライヤー氏は全体の4分の1が否定的な回答をしたこと
を「警鐘」だとしている。
ドイツが改善すべき問題を3つ選んで回答するアンケート項目では、「煩雑な行政手
続き・規制の簡素化」が70%に達し、ダントツで多かった。2位から4位までは差が小
さく、「企業と外国人就労者を歓迎する文化」は44%、「信頼できる政策決定」は
43%、「政策決定が企業とドイツの経済立地にもたらす影響の評価」は42%だった。
3位と4位の回答からは、与党間の政策調整が適切に機能せず軸足が定まらないショル
ツ政権への批判が読み取れる。

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