ティッセンの軍用船子会社、投資会社への売却がとん挫

独複合企業ティッセンクルップは22日、軍用船子会社ティッセンクルップ・マリ
ン・システムズ(TKMS)を米投資会社カーライルに売却する交渉が打ち切られたこ
とを明らかにした。カーライル側が交渉からの撤退を通告した。ドイツ政府内に
カーライルへの売却に難色を示す声があったことが原因とみられる。
ティッセンはTKMSからの撤退方針を2023年3月に打ち出した。今年3月にはカーライ
ルと交渉している事実を公表。資産査定(デューデリジェンス)を行うことを明ら
かにしていた。
経済紙『ハンデルスブラット』によると、カーライルはTKMS株およそ75%を取得す
ることでティッセンと大筋合意していた。残り約25%は国が引き受ける方向だっ
た。
政府はこの計画を承認する方向で10月第3週(14〜20日)に次官級会議を開催した
が、経済・気候省が反対の意向を示したことから、決定を延期。カーライルへの売
却以外の選択肢も検討することにした。同投資会社はこれを受け、TKMS買収を取り
止めたもようだ。
潜水艦の建造は長期プロジェクトであることから、発注元は潜水艦が確実に納入さ
れることの保証を要求する。これまでは親会社ティッセンがこの保証を行ってき
た。TKMSが投資会社の子会社になると、銀行からプロジェクト資金の保証を得るこ
とが難しくなるため、国の資本参加が検討されていた。
ティッセンは22日の声明で、TKMSの新たな売却先を模索するほか、新規株式公開
(IPO)を通した同子会社からの撤退も並行して検討する意向を表明した。ただ、
TKMSの株式が公開され、資金があれば誰でも大株主になれるようになると、重要な
軍事機密の保持が難しくなるという問題が発生することから、政府の了承を得るの
は難しい。
同社の買収に関心を示す企業は現在も複数、あるもようだ。

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