電機大手の独シーメンスは10月30日、産業ソフトウエアの有力企業である米アルテ
ア・エンジニアリングを買収することで両社が合意したと発表した。工場や製品な
どに関わる物理世界の出来事を、そっくりそのまま仮想空間にリアルタイムに再現
するデジタルツインのコンピテンスを強化し、IT企業としてのプロフィールを一段
と鮮明化する。ローラント・ブッシュ社長は「シミュレーション、高性能コン
ピューティング、データサイエンス、人工知能分野におけるアルテアの能力を(自
社のビジネスプラットフォームである)シーメンス・エクセラレーターに加えるこ
とで、全世界で最も包括的なAIベースの設計・シミュレーションポートフォリオが
生まれる」と意義を強調した。
株式公開買い付け(TOB)を通してアルテアを買収する。1株当たりの提示額は113
ドル。これは買収観測が出る前日の終値を19%上回る水準で、アルテアを約100億
ドルと評価したことになる。全株式の取得に成功すれば、シーメンス史上で2番目
に大きな買収となる。2025年下半期の取引完了を見込む。
アルテアはミシガン州トロイに本社を置く1985年の設立。人工知能(AI)を活用し
た産業用シミュレーションに強みを持つ。従業員数は3,500人で、そのうち1,400人
を研究開発要員が占める。昨年の売上高は5億5,000万ドル。これまで4年連続で赤
字を計上してきたが、今年1-9月期の純損益は1,300万ドルの黒字となった。
シーメンスは同社の買収により、デジタル事業の売上高(2023年9月期73億ユー
ロ)が8%増加すると見込んでる。クロスセリングやポートフォリオの補完性など
の効果で売上高は中期的に年5億ドル、長期的に同10億ドル拡大する見通し。営業
利益(EBITDA)については買収後2年目で1億5,000万ドル超のシナジーを予想す
る。