最大手スーパーの買収計画、雇用保証など上限に経済相が承認

ドイツのガブリエル経済相は12日、独中堅食品スーパーのカイザース・テンゲルマン(以下カイザース)を業界最大手のエデカが買収する計画の承認方針を明らかにした。連邦カルテル庁は同計画を認めると小売市場の公正な競争が阻害されるとして承認せず、政府の諮問機関である独占委員会も同様の見解を示していたが、経済相は雇用の喪失を懸念しているもようで、厳しい条件を付けて特別に許可する意向だ。

カイザースの親会社であるテンゲルマンは2014年10月、カイザースをエデカに売却する計画を明らかにした。カイザースは事業規模が小さく赤字が続いており、単独で生き残るのは不可能と判断したためだ。

カルテル庁はこれを受けて同計画の調査を開始し、15年2月、一部の地域で市場の寡占が強まるほか、商品調達面でも中堅スーパーとメーカーに不当なしわ寄せが出るとして変更を要求。エデカは計画を一部変更したものの、同庁は不十分として4月に不承認の決定を下した。

エデカはこれを受けて、同社がカイザースを買収しなければ大量の雇用が失われるとして経済相の特別許可を申請したため、独占委員会は調査を実施。エデカが買収してもカイザースでの大規模な人員削減は避けられないと指摘した。また、他の企業がカイザース買収に名乗りを上げていることも挙げ、テンゲルマンはカイザースの売却手続きを仕切り直すべきだとの見解を示した。

このため、ガブリエル経済相は同計画を承認しないとみられていたが、◇カイザースの従業員1万6,000人のうち97%以上をエデカが最低5年間、継続雇用する◇カイザースの店舗をエデカが買収後5年間は原則的に売却しない◇カイザースの店舗を売却する場合は当該店舗で整理解雇を2年間、行わないことを売却先に義務づける――などを条件に特別許可を出す意向を明らかにした。

エデカの計画は◇継続雇用を保証する従業員の割合を93%とする◇カイザースの店舗を買収後1年目から段階的に売却していく――などとなっていた。経済相が提示した条件はこれよりも厳しく、エデカはカイザースを買収するとこれまでの想定よりも重い負担を背負い込むことになる。

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