対トルコ難民支援策、30億ユーロ拠出を正式承認

EU加盟国は3日、シリア難民の最大の流入先になっているトルコに対し、難民支援のための資金として30億ユーロを提供する計画を正式に承認した。EU予算から10億ユーロを拠出し、残り20億ユーロを加盟国で分担する。

国際移住機関(IOM)などによると、2015年に欧州に流入した難民や移民は100万人を超え、その大部分が内戦が続くシリアやイラク、アフガニスタンからトルコ経由でギリシャに入国している。こうした事態を受け、EUとトルコは昨年11月、EUがトルコに対して難民支援のための資金として30億ユーロの援助を行う見返りに、同国が国境管理の強化などで協力することで合意。12月には停滞していたトルコのEU加盟交渉を再開し、さらにEU側は今秋をめどに、トルコ国民がビザなしでEU諸国に渡航できるようにする方針を打ち出している。

欧州委員会は当初、EU予算からの拠出を5億ユーロとする方針だったが、財政赤字を抱える加盟国の反発で10億ユーロに増額。イタリアはさらにEUからの拠出を増やすべきだと主張し、合意が遅れていたが、欧州委が財政赤字の算出にあたり、難民対策に関連したトルコへの支援金を除外できるとの方針を打ち出したことで、ようやく承認にこぎつけた。各国が約束した拠出額はドイツの4億2,750万ユーロを筆頭に、英国が3億2,760万ユーロ、フランス3億920万ユーロ、イタリア2億2,490万ユーロ、スペイン1億5,280万ユーロなどとなっている。

トルコ国内には現在、推定250万人のシリア難民がとどまっているとみられるが、十分な支援が行き渡っていないのが実情だ。EUはトルコ国内の難民の生活を改善することで、引き続き同国にとどまるよう促したい考え。具体的には欧州委がトルコ政府との合意内容をもとに策定した「行動計画」に基づき、国連機関や非政府組織を(NGO)を通じて約200万人のシリア難民を収容できる受け入れ施設の設置計画などを資金面で支える。

トルコ側はこれに対し、沿岸警備の拡充など国境管理を強化するとともに、欧州を目指す難民や移民を仲介する密航業者の取り締まりを強化することなどで合意している。しかし、欧州委のティマーマンス第1副委員長は先月、トルコ経由で欧州に流入する難民や移民の数は「依然として高い水準」にあり、「満足できる状態からはほど遠い」と指摘。難民危機をめぐるトルコ政府の対応は「不十分」と述べ、早急に取り組みを強化するよう求める考えを示していた。

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