欧州委員会は10日、より安全で透明な金融システムの構築を目的とする新金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」の施行を1年先送りすると発表した。同規制を管轄する欧州証券監督機構(ESMA)と規制対象となる金融機関の準備に時間がかかると判断したためで、施行日を予定していた2017年1月3日から18年1月3日に延期する。
EUでは07年に現行指令の「MiFID」が施行され、資本市場と投資サービスに関する包括的な規制の枠組みとして機能してきた。しかし、規制対象が限定されているため市場の透明性が十分に確保されず、これが金融危機を招く一因になったとの反省を踏まえ、14年4月に同指令を改正するMiFID Ⅱの法案を可決した。
MiFID Ⅱには、これまで規制の枠外にあった債権などの投資商品や私的プラットフォーム上での取引の規制や、専用のプログラムを用いて自動的に発注を繰り返す高頻度取引(HFT)に対する規制などが盛り込まれている。これによって市場の透明性向上と投資家保護の強化を図る。
新規制の施行をめぐっては、ESMAが昨年、延期が必要との見解を示していた。新ルール運用に必要なIT(情報技術)システムの整備には複雑な作業が必要で、ESMAと金融機関の双方で準備が遅れているという理由だ。欧州委はこうした状況を考慮し、施行の1年先送りが妥当と判断した。
一方、一部の加盟国は新規制導入に必要な国内法の整備を完了する期限を16年7月から延長するよう求めていたが、欧州委は拒否し、スケジュールの変更に応じなかった。
施行の延期は加盟国と欧州議会による承認を経て、正式決定される。