英大手企業の3割に相当する約200社のトップは23日に発表した共同書簡で、英国のEU離脱は国内経済に大きな打撃を与えるとして、残留を支持する意向を表明した。キャメロン首相にとっては追い風となるが、離脱支持派も動きを活発化させており、6月の国民投票に向けて双方の激しいキャンペーン合戦が繰り広げられる見込みだ。
同書簡に署名したのは石油大手BP、ロイヤル・ダッチ・シェル通信大手BT、小売り大手マークス・アンド・スペンサーなどのトップ。英国の代表的な株価指数であるFTSE100を構成する100社のうち36社が含まれる。
23日付けの英有力紙タイムズに掲載された書簡は、「事業と投資、雇用を拡大するためには、5億人規模の欧州市場への無制限のアクセスが必要だ」と指摘。「EU離脱は投資を減退させ、雇用を脅かし、経済にリスクをもたらす」として、離脱支持派をけん制した。
キャメロン首相は20日、EU加盟国が英国の離脱回避に向けたEUの制度改革案で合意したことを受けて、離脱の是非を問う国民投票を6月23日に実施すると発表していた。
英国内では残留支持をめぐる国論はなお二分されている。経済界では金融大手バークレイズ、小売大手テスコなど大手企業の3分の2のトップが書簡への署名を拒否した。政界でも与党・保守党で6人の閣僚がEU制度改革を不十分として離脱支持を表明。フィナンシャル・タイムズによると、同党の下院議員331人の半数近くを離脱派が占める。
キャメロン首相にとっては、特にカリスマ的人気を誇るジョンソン・ロンドン市長が21日に離脱支持を打ち出したことが大きな打撃で、EUとの合意直後に上昇した通貨ポンドは22日、こうした動きを受けてEU離脱への市場の警戒感が強まり、対ドルで約7年ぶりの安値に急落した。