ドイツの定年退職年齢は現在65歳である。ただ、金銭的な補償措置を取ることで合意が成立すれば企業は被用者を早期退職させることができる。この早期退職に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が17日に判決(訴訟番号:8 AZR 677/14)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は自動車メーカーの事業拠点で乗用車の販売を統括する1952年10月生まれの管理職が同社を相手取って起こしたもの。同社は2003年、上級管理職を対象に早期退職制度「60+」を導入した。同制度に応じた管理職は60歳になると一時金を受け取ったうえで退職できることになっており、原告は応募の最終期限である05年12月末日に適用を申請した。
同社は12年になって、同退職年齢を62歳に引き上げる新制度「62+」を導入。「60+」に応じた管理職で同年中に57歳となる者を対象に11月から「62+」への契約変更を提案した。
原告は同年10月に60歳となったため、「60+」の契約に基づき一時金12万3,120ユーロを受給して同月末で退職した。原告は「62+」への契約変更の提案を同社から受けておらず、これが一般平等待遇法(AGG)で禁じられた年齢差別に当たると批判。損害賠償と慰謝料の支払いを求めて提訴した。具体的には◇60歳で退職したことで取得できなくなった2年分の給与をAGG15条1項の規定に基づき損害賠償として支払う◇同2項の規定に基づき慰謝料も支払う――よう被告メーカーに要求した。
1審と2審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審の判断を支持し違法な差別なかったとの判断を示した。判決理由でBAGの裁判官は、比較可能な状況にある他の人に比べて不利な待遇を受けることを「直接的な差別」と定義したAGG3条1項の規定を指摘。そのうえで、被告が「62+」への契約変更を提案した12年11~12月の時点で、被告と原告との間に雇用関係はなく、原告は契約更新の提案を受けた(雇用関係にある)被用者と比較可能な状況にないと言い渡した。また、「60+」に関しては比較可能な状況にある他の上級管理職と同等の待遇を受けたとの判断を示した。