「有給休暇の全面的な請求権は雇用関係が6カ月存続した後に初めて取得される」。これは有給休暇法(BUrlG)3条に記されたルールである。では、7月1日以降に新規採用された被用者、つまり当該年度の雇用期間が6カ月以下の被用者には有給休暇の全面的な請求権がないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月に判決(訴訟番号:9 AZR 179/15)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は警備会社の元社員が同社を相手取って起こしたもの。同社員は2013年7月1日付で採用され、翌14年1月2日付で退職した。これに伴い雇用主は、未消化の有給休暇を金銭に換算して支払った。
業界の労使協定では年次有給休暇が計26日と定められていた。また、有給休暇の全面的な請求権を持たない被用者が退職した場合は、BUrlG5条の規定に基づき、雇用関係のあった期間についてひと月につき年次有給休暇の12分の1の日数をあてがうことになっていた。
原告の13年の勤務期間がちょうど6カ月であったことから、被告企業は原告の年次有給休暇請求権が半分の13日であると判断。これを金銭に換算し原告に1,170ユーロを支払った。
これに対し原告は、13年の年次有給休暇を全面的に(1年分)請求する権利があると主張。有給26日分の支払い(1,170×2=2,340ユーロ)を求めて提訴した。
原告は下級審で敗訴、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由でBAGの裁判官は、有給休暇の全面的な請求権は雇用関係が6カ月存続した「後(nach)」に発生すると指摘。原告の雇用期間は12年12月末時点でちょうど6カ月に達したが6カ月を過ぎてはいなかったとして、原告に1年分の有給休暇取得権はないとの判断を示した。