伊金融業界が銀行支援の基金創設、不良債権など買い取りへ

イタリア政府と国内金融業界は11日、多額の不良債権を抱えて厳しい状況にある銀行を支援する50億ユーロ規模の民間基金「アトランテ・ファンド」を創設することで合意した。同基金は経営難に陥っている銀行の不良債権、株式を買い取り、国内金融システムの安定化を図る。

財務省と大手銀行、保険会社、政府系金融機関の貯蓄貸付公庫の代表による協議で創設が決まったアトランテ・ファンドは、大手銀行ウニクレディト、インテサ・サンパオロなど民間から資金を集めて運営される。伊資産運用会社のクアエスティオ・キャピタル・マネジメントに運営を委託する。消息筋がロイター通信に明らかにしたところによると、ウニクレディトとインテサ・サンパオロはそれぞれ10億ユーロを負担するという。

イタリアの銀行が抱える不良債権は総額3,600億ユーロと推定されている。ユーロ圏の不良債権の3分の1に上る規模だ。これが金融不安を招き、景気回復の足かせとなっている。

欧州中央銀行(ECB)から不良債権処理の促進を求められている伊政府は1月、EUの欧州委員会と処理策で合意。銀行が不良債権を証券化し、売却を進めることになった。政府は不良債権の買い取りを促進するため、保証を供与し、買い手のリスクを軽減する。

アトランテ・ファンドは同計画の一環として設立されるもので、不良債権を買い取るほか、金融不安で資金調達が困難な銀行の増資も引き受け、対象銀行の資金繰り改善を支援する。第一弾として、資金不足が深刻なバンカ・ポポラーレ・ディ・ヴィチェンツァを支援するとみられる。

イタリア株式市場では同日、民間基金の創設によって不良債権処理計画が軌道に乗り、金融不安が払しょくされるとの見方が広がり、銀行株が急騰した。

EUでは危機に直面する銀行への公的支援を厳しく制限するルールがあり、伊政府は「バッドバンク」と呼ばれる不良債権の受け皿機関を創設し、公的資金を使って処理する計画だったが、欧州委の反対で買い取りは民間に委ね、公的保証だけを行う方向に転換した経緯がある。アトランテ・ファンドの詳細は固まっていないが、貯蓄貸付公庫が一定額を拠出する見込みで、これがEUの承認を取り付けることができるかどうか微妙との見方が出ている。

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