欧州議会が金融指標の規制強化案を可決、LIBOR不正操作受け監督体制強化

欧州議会は4月28日の本会議で、金融指標に対する規制を強化するための規則案を賛成多数で可決した。監督体制を強化して指標の安定性と信頼性を高め、金利指標の不正操作スキャンダルで失われた金融市場への信頼回復を図るのが狙い。EU加盟国は昨年11月に規則案の内容で基本合意しており、近く開かれる閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。

規則案はロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作が発覚したのをきっかけに、欧州委が2013年9月に提案した。LIBORは企業金融や住宅ローンなどの基準金利として広く利用されていたが、ほとんど規制や監督の対象となっていなかった。新規則は証券監督国際機構(IOSCO)が定める指標管理に関する基本原則より厳格な内容となっているため、IOSCOの原則を採用している米国など第3国の指標の扱いをめぐって協議が長引いていた。

新規制の対象にはLIBORやユーロ圏の指標金利である欧州銀行間取引金利(EURIBOR)のほか、デリバティブ(金融派生商品)や石油・ガスといった商品市場で用いられる指標も含まれる。各種指標を提供する「アドミニストレーター」は各国当局の認可を得なければならず(アドミニストレーターが金融機関の場合は登録制)、指標の算出にあたって市場や経済の実態が反映されるよう「十分かつ正確なデータ」を使用することが義務付けられる。指標の算出や管理をめぐる違反行為には制裁金が科される。

一方、新規則は各指標を重要度に応じて「最重要(クリティカル)指標」「重要指標」「非重要指標」に分類し、異なる規制や監督体制を設けている。このうち最重要指標は総額5,000億ユーロ以上の金融商品において基準となっていることなどを要件とするもので、LIBORやEURIBORなどが該当する。こうした最重要指標は当該指標のアドミニストレーターが所在する国の監督当局を中心に、指標を算出するためのデータ提供者が所在する国の当局、パリに本部を置く欧州証券市場監督局(ESMA)の3者が協力して規制・監督にあたる。欧州委は当初、重要指標をESMAが一括して監督するシステムを検討していたが、英国などの反対で一元化に踏み切れず、加盟国に主要な権限を残したうえでESMAや他の関係国の当局が協力する形に落ち着いた。

このほか、TIBOR(東京市場の銀行間取引金利)など第3国の指標をEU域内の金融機関が利用するには、規制や監督レベルがEUと同等と認められる「同等性評価」、第3国のアドミニストレーターによるEU規則の遵守を要件とする承認制度、EU域内のアドミニストレーターや金融機関による推奨――のいずれかの手続きを経なければならない。

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