経済協力開発機構(OECD)は4月27日、英国がEUを離脱した場合の影響を分析した報告書をまとめ、離脱によって英国の国内総生産(GDP)が2020年までに3%押し下げられるとの試算を公表した。英国との貿易が減少することで大陸欧州の景気も減速すると指摘。EU離脱の是非を問う国民投票で実際に英国が離脱を選択すれば、欧州経済全体に深刻な影響が出ると警告している。
報告書は英国がEUを離脱すれば家計も圧迫し、1世帯当たり2,200ポンド(約35万円)の「税負担」を強いられるのと同じ結果になると指摘。EU内に留まった場合と比べて30年まではGDPが5%縮小するとの予測を明らかにした。さらに、英国を除いたEUのGDPも20年までに1%減少すると試算している。
OECDのグリア事務総長は27日にロンドン市内で講演し、EUを離脱して単一市場のメリットがなくなれば英国への投資が縮小し、企業の国外移転も加速すると指摘。「OECDが導いた結論は明確だ。EU離脱は英国にとってプラス面は何もない。本来は回避できる損失が増えるだけだ」と警告し、EU残留を訴えた。同氏はさらに、離脱推進派の代表格であるロンドン市長のボリス・ジョンソン氏が「EUから離脱すれば巨額の拠出金を節約できるうえ、官僚的な規制から解放されて自由に通商政策を進めることができる」と主張している点に言及。EUへの拠出金よりEU内に留まることで得られる経済面のメリットの方がはるかに大きいと指摘した。
6月23日の国民投票が近づくなか、国際社会からはEU離脱をけん制する動きが活発化している。国際通貨基金(IMF)は4月初めにまとめた報告書で、英国のEU離脱は世界経済に深刻な打撃を与える恐れがあると警告した。一方、オバマ米大統領は22日にロンドンでキャメロン首相と会談し、EUを離脱した場合、米国との貿易交渉で英国は「列の後方に並ぶことになる」と発言。EUから離脱しても米国と個別に自由貿易協定(FTA)を結べば不利益は生じない、と主張する離脱推進派をけん制した。