欧州委員会は4月29日、仏海運大手のCMA-CGMがシンガポールの同業ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)を買収する計画を条件付きで認可したと発表した。欧州委はコンテナ輸送市場で寡占化が進み、価格上昇などの弊害を引き起こす事態を懸念していたが、NOLがCMAと競合関係にある定期コンテナ船共同運航のアライアンスから脱退することを条件に、両社の取引を認めた。
CMAは昨年12月、NOLを24億米ドルで買収すると発表した。CMAはコンテナ海運でAPモラー・マースク(デンマーク)とMSCメディタレニアン・シッピング・カンパニー(スイス)に次ぐ世界3位。海運業界が世界経済の成長鈍化による需要低迷で厳しい状況に直面するなか、NOLの買収は、APモラーが2005年にロイヤルP&Oネドロイド(オランダ)を29億6,000万ドルで買収して以来の大型案件となる。買収が実現するとCMAはコンテナ海運で世界シェアが12%となり、2位のMSC(14%)に迫るため、欧州委は両社の統合が米州、中東、インド亜大陸、極東、オセアニアと欧州を結ぶ定期航路に及ぼす影響に重点を置いて調査を進めていた。
こうしたなかCMAは先月、欧州委の認可を得るため、NOLを定期コンテナ船共同運航のアライアンス「G6」から脱退させる旨の是正策を提案した。アライアンスは定期船市場で運航を効率化し、顧客のさまざまな要求に対応するための協定で、グローバル規模での運航計画の策定、船舶の共同運航、資金の共同活用による投資分担とコスト削減、提携相手のコンテナ積み付けスペース(スロット)を利用した市場参入などに主眼を置いている。
CMAは「オーシャンスリー(O3)」と呼ばれるアライアンスを主導しているが、欧州委はNOLの買収を認めた場合、同社が参加する競合アライアンスのG6とO3の間に新たな協力関係が生まれ、公正な競争が阻害される可能性があるとの見方を強めていた。CMAが提示した是正策によってこうした懸念は解消されると判断し、NOLがG6から脱退することを条件に買収計画を認可した。