リバティがタタ英事業の買収に名乗り、経営陣はMBOを正式表明

インド鉄鋼大手タタ・スチールが売却の意向を表明している英国事業をめぐり、英鉄鋼商社リバティ・ハウス・グループは3日、タタに対して正式に買収案を提示したと発表した。一方、タタ英国部門の経営陣を中心とするグループも同日、マネジメントバイアウト(MBO)の意向を正式に表明した。英政府は買い手企業に対する支援策を用意して事業売却を後押しする方針を打ち出しており、2グループが買収に名乗りを上げたことで、製鉄所が閉鎖されて1万人以上が職を失う最悪の事態は回避される可能性が高まった。

タタは3月末、赤字経営が続く英国事業の売却を決定。欧州の条鋼事業は英投資会社グレイブル・キャピタルに売却することが決まったが、ウェールズ南東部にある英最大の製鉄所ポート・タルボット工場などの売却先は決まっていない。同製鉄所が閉鎖に追い込まれた場合、ウェールズでは関連産業を含めて約2万人の雇用が失われる恐れがあり、地域経済に深刻な影響が及ぶことになる。

リバティを率いるインド出身のサンジーブ・グプタ氏は、4月初めの段階でポート・タルボットを含む英国事業の買収に意欲を示し、高炉での鉄鋼生産からスラブと呼ばれる半製品の加工に事業の軸足を移す考えを示していた。リバティは声明で「敏捷で持続可能な非循環型モデルに転換できれば、英国の鉄鋼産業は長期的な存続が可能だ」と指摘。買収に向けて印最大の商業銀行であるインドステイト銀行などをアドバイザーに指名したことを明らかにした。

一方、タタ・スチールUKの鋼板事業を率いるスチュアート・ウィルキー氏らは英国事業のMBOに向け、新会社「エクスカリバー・スチール」を設立した。ウィルキー氏は声明で「エクスカリバーは鉄鋼事業に関して豊富な知識と経験を持つ経営陣を擁し、タタの再生に必要な多くの要素を備えている。当社はタタの英国事業を復活させることができると確信している」と強調した。

英政府は国内で約1万6,300人を雇用するタタの事業売却を後押しするため、買い手企業に対して数億ポンドの資金援助を行うことや、タタの英国事業に最大25%出資するなどの支援策を打ち出している。

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