中国の「市場経済国」自動認定、欧州議会が反対

欧州議会は12日の本会議で、中国を自動的に「市場経済国」として認定すべきではないとする決議を圧倒的多数で採択した。中国はEUが設けた市場経済国としての基準を満たしておらず、世界貿易機関(WTO)の規定により「非市場経済国」としての地位が失効する今年12月以降も、反ダンピング(不当廉売)措置を維持する必要があると主張。7月中に欧州議会と加盟国に認定の是非を提案する見通しの欧州委員会に対し、雇用や域内経済への影響などを考慮して慎重に対応するよう求めている。

中国は2001年にWTOに加盟した際の議定書で、加盟から15年間は非市場経済国として扱われることを受け入れた。この規定が12月11日付で失効するため、中国政府はその後は自動的に市場経済国に移行すると主張している。しかし、市場経済国に認定した場合、中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング措置を講じることが困難になり、自国の製造業者はより一層厳しい競争にさらされることになる。このためEU、米国、日本などは認定の可否を改めて判断する方針で、中国側はこれに対し、議定書の条約義務に基づいて同国を市場経済国として認定するよう強く求めている。

本会議では賛成546、反対28、棄権77で決議が採択された。EUは現在、73の品目に対して反ダンピング措置を適用しており、このうち中国から輸入される製品が56品目と全体の約8割を占めている。特に鉄鋼製品の供給過剰は域内産業に深刻な打撃を与えており、業界団体などは中国が市場経済国に移行した場合、雇用により一層の悪影響が及ぶとして認定に強く反対している。決議はこうした現状を踏まえ、EUが独自に設けている市場経済国としての5つの基準を満たすまで、中国からの輸入品に対して「標準的な国より厳しい」対抗措置を講じる必要があると指摘している。

決議自体に法的拘束力はないが、正式な認定には欧州議会の承認が必要なため、中国寄りの姿勢をみせる欧州委を牽制する狙いがある。ただ、12月以降も市場経済国への移行を認めなかった場合、WTO協定に違反するとして中国に訴えられる恐れがある。欧州議会は貿易相手としての中国の重要性を認めたうえで、WTOルールを遵守しながら域内産業と雇用を保護するための「バランスの取れた対応」が不可欠と強調。そのためにも「EUが単独で一方的に」市場経済国として認定することはせず、今月末に日本で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議などを利用して、米国や日本と結束して対応にあたる必要があると指摘している。

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