大手格付け会社の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は6月27日、英国のEU離脱が国民投票で決まったことを受けて、同国の長期信用格付けを最上級の「トリプルA」から2段階引き下げ、「ダブルA」にしたと発表した。S&Pが最上級から一気に2段階格下げするのは初めて。同日には欧州系フィッチ・レーティングスも同格付けを「ダブルAプラス」から「ダブルA」に1段階引き下げた。
S&Pとフィッチは格下げについて、英国はEU離脱が決まったことで経済が悪化するほか、スコットランドで独立の気運が再燃しているため国家分裂の危機に直面していることや、与党・保守党の動揺、EUとの貿易関係がどうなるか不透明な点に言及。格付け見通しについても、ともに「ネガティブ(弱含み)」とし、さらなる格下げを示唆した。
S&Pは声明で、国民投票の結果は「英国の経済活動の悪化を招く」として、特に英経済を支える金融サービス業が大きな打撃を受ける恐れがあると指摘。同国の2016~19年の予想成長率を従来の年平均2.1%から1.1%に引き下げた。また、フィッチは17、18年の予想成長率を2%から0.9%に下方修正した。
S&P、EUも格下げ
一方、S&Pは30日、EUの格下げも発表した。英国の離脱で財政の柔軟性、政治的な結束が弱まると判断したもので、長期信用格付けを「ダブルAプラス」から「ダブルA」に1段階引き下げた。格付け見通しについては、他の加盟国が離脱する恐れはないとして、「安定的」とした。