ドイツ政府は12日の閣議で、医薬品供給強化法案を了承した。画期的な新薬の開発意欲を削がないようにするとともに、健康保険の薬剤費支出を抑制することが狙い。連邦議会(下院)の決議を経て来年から施行される見通しだ。
医薬品市場には近年、米ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」など効果の高い製品が登場している。ただ、こうした製品は価格は極めて高く、ソバルディは1錠700ユーロに上る。治療に要する費用は10万ユーロを超え、健保の薬剤費支出を押し上げている。
政府はこうした現状を踏まえ、市場投入後1年以内の医薬品であっても売上高が2億5,000万ユーロを超えた場合、薬価決定に向けた健保との交渉をメーカーに義務づけるルールを同法案に盛り込んだ。現行法では健保との薬価交渉の対象となる製品が上市後1年を経過したものに限られている。
法案にはまた、公的健保の給付上限額(Festbetrag)が決まっていない医薬品の価格を2009年8月1日時点の水準に据え置く時限ルール(物価上昇分の上乗せは可能)についても、失効期限を17年末から22年末に延長することも盛り込まれている。
さらに、既存の抗生物質の効用を評価し薬価を定める際に、耐性菌がすでに出現しているかどうか、また出現している場合はその深刻度を反映させるようにするルールも政府は導入する考え。これにより抗生物質の無駄な投与が減少すると期待している。
政府はこのほか、上市後間もない特許薬の薬効評価を行う委員会を設立し、医師が情報を簡単に入手できるようにする。同委員会は医師、心理療法士、病院、健康保険の代表で構成される。