中国企業のシンジェンタ買収、欧州委が本格調査

欧州委員会は28日、中国化学大手の中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスの農薬・種子大手シンジェンタを買収する計画について、EU競争法に基づく本格調査を開始したと発表した。両社の取引を認めた場合、欧州の農薬市場で寡占化が加速し、価格上昇などの弊害が生じる恐れがあると判断した。欧州委は買収計画を精査し、来年3月15日までに結論をまとめる。

国営企業のケムチャイナは今年2月、シンジェンタを430億ドルで買収すると発表。8月下旬に欧州委に買収認可を申請した。成立すれば中国企業による海外企業の買収で過去最大の案件となる。

欧州委が最も問題視しているのは、ケムチャイナが経営権を握るイスラエルのジェネリック農薬最大手アダマ・アグリカルチュラル・ソリューションズと、シンジェンタの事業分野に重複が多い点。両社の統合が実現するとすでに寡占化が進んでいる欧州農薬市場でシンジェンタの競合相手が減り、公正な競争が阻害される可能性があるとの見方を示している。欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は「買収が価格上昇や農業従事者の選択肢を狭めることにならないか、慎重に判断する必要がある」と指摘した。

欧州委の発表を受け、ケムチャイナとシンジェンタは「できるだけ早期に買収計画が承認されるよう、欧州委と建設的な協議を続けていく」とコメントした。なお、ロイター通信は事情に詳しい中国側の関係者からの情報として、ケムチャイナがアダマの一部事業の売却を含む是正案を欧州委に提示したと報じている。

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