勤務予定表への事業所委の同意に期限を設定できるか

始業時間と終業時間、休憩時間などは労働組合との協定や法律で特別な定めがない限り、経営者と従業員の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)が共同で決定しなければならないことが、事業所体制法(BetrVG)87条1項2に定められている。つまり事業所委員会がある企業では雇用主が労働時間を一方的に決定してはならないのである。

では、経営者が作成した勤務予定表案に事業所委が同意しない場合、あるいは同意が遅れた場合、経営者は同委の同意なしで予定表案通りに従業員を働かせることができるのだろうか。この問題をめぐる係争でメクレンブルク・フォーポマーン州労働裁判所が昨年11月10日の決定(訴訟番号:2 TaBVGa 5/15)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はリハビリ病院の事業所委員会が同病院を相手取って起こしたもの。同病院では各月の勤務予定表案を経営者が作成しその前の月の初日に事業所委に提示する決まりになっている。経営者は同委が10日までに予定案に異議を唱えなければ、予定案を決定されたものとみなして掲示してきた。

2015年4月の勤務予定表案を3月初めに事業所委に提示したところ、同委は期限の3日後である13日になって拒否の意向を伝えてきた。経営者は毎月10日を回答期限とみなしていたため、同委の意向を無視して予定表を掲示。予定表通りに従業員を働かせた。

事業所委員会はこれを不当として提訴し、2審のメクレンブルク・フォーポマーン州労裁で勝訴した。決定理由で同州労裁の裁判官は、事業所委の同意がない勤務計画はBetrVG87条1項2の規定に違反するものだと指摘。同意期限を設定しそれを過ぎた場合は事業所委が同意したものとみなすことも不当だとの判断を示した。

では、翌月の勤務計画をめぐり経営者と事業所委が合意できなかったらどうなるのだろうか。裁判官はこの問題に関しては、共同決定の対象となっている事項で経営者と事業所委の合意が成立しない場合は、両者の代表で構成される調停所(Einigungsstelle)が拘束力のある決定を下すとしたBetrVG87条2項の規定を指摘。原告と被告は調停所を通して勤務計画をめぐる争いを解決しなければならないと言い渡した。抗告は認めなかった。

■■「調停所」とは ■■

事業所体制法(BetrVG)76条で定義された機関で、経営者と事業所委員会の意見の対立を解決するために設立する。両者の取り決めで常設機関することもできる。

メンバーは経営者と事業所委がそれぞれ同数を任命。またこれとは別に、中立の立場の人物1人を両者の合意で議長に任命する。

調停所の決議は多数決で採択する。議長は原則として決議に加わらないものの、経営者と事業所委の決議案がともに過半数に届かない手詰まり状況へと陥った場合は、議長も決議に加わる。

上部へスクロール