米クラフトがユニリーバ買収提案を撤回、交渉は困難と判断

米食品大手クラフト・ハインツは19日、英蘭系の食品・日用品大手ユニリーバへの買収提案を撤回したと発表した。ユニリーバは17日、クラフトが提示した1,430億ドルの買収案を拒否していた。クラフトは引き続きユニリーバに交渉を働きかける意向を表明していたが、これ以上協議を続けても合意できる可能性は低いと判断し、最終的に買収を断念したもようだ。市場では早くもクラフトが別の買収先を模索するかどうかに注目が移っている。

クラフトによるユニリーバの買収が成立すれば、食品・飲料業界では過去最大規模のM&A(合併・買収)となり、消費財分野でスイスのネスレに次ぐ巨大企業が誕生するはずだった。クラフトの広報担当は声明で、「極めて早い段階で買収の意図が公になってしまった。当社としては友好的に交渉を進めたかったが、ユニリーバ側に取引の意思がないことが明らかになったため、早期に手を引くことが双方にとって最善だと判断した」と説明している。

「クラフト」チーズや「ハインツ」ケチャップなどを展開するクラフト・ハインツは、2015年にクラフトフーズとハインツが合併して誕生した世界5位の食品メーカー。著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイと3Gキャピタルが同社の経営権を握っている。

一方、パーソナルケア製品の「ダヴ」や「リプトン」紅茶などの有力ブランドを持つユニリーバは、グループ全体の成長を支えてきた新興国での業績鈍化や、英国のEU離脱決定を受けたポンド下落に伴う国内での生産コストの上昇などで収益が悪化している。1月には2016年第4四半期の売上高が予想を大幅に下回ったことを受け、株価が5%近く下落。これが買収機会を狙うクラフトにとって追い風になったとみられる。ただ、ユニリーバは利益率の低い食品事業を縮小して日用品事業に軸足を移しており、ユニリーバの買収を機に米国以外の市場で食品事業を強化したいクラフトとの間で、戦略の隔たりが大きかったとの見方が出ている。

日用品事業に力を入れるユニリーバの買収を試みたことで、市場ではクラフトが今後、食品以外の事業を中核分野とする企業の買収に乗り出すとの見方が出ている。スタンフォード・バーンスタインのアナリストは新たな買収ターゲットとして、米日用品大手コルゲート・パルモリブを候補に挙げた。一方、別の市場関係者は、以前から有力な買収先候補とみられていたモンデリーズ・インターナショナルなど、大手食品会社に触手を伸ばす可能性が依然として高いと指摘している。

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