EU加盟国は21日開いた経済・財務相理事会(ECOFIN)で、多国籍企業の課税逃れを防止するための新たなルールを定めた「租税回避防止指令(ATAD)2」の内容で合意した。税法上の取り扱いの差異(ハイブリッド・ミスマッチ)を利用した課税逃れを全面的に禁止することが柱で、昨年7月に採択された「ATAD」の規定をさらに強化した内容。2020年1月から新ルールが導入される。
「ATAD」は経済協力開発機構(OECD)の「税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画」に対応するため、欧州委が昨年1月に打ち出した「租税回避防止パッケージ」の核となるもので、典型的な課税逃れのスキームに対抗するための法的拘束力を持つルールを定めている。具体的には控除対象となる利子の上限を定める「利子損金算入制限」、知的財産権の域外への移動に対して課税する「出国課税」、低税率国に移転した利益に課税する「外国子会社合算税制(CFC)」、租税回避を目的とした「技巧的」な納税方法に関する税務当局と企業の取り決め(タックスルーリング)を制限する「一般的租税回避防止規定(GAAR)」と、「ハイブリッド・ミスマッチ対策」の5つの規定で構成されている。
ハイブリッド・ミスマッチ規定は、加盟国間における特定の収益や企業形態などに対する税務上の差異を利用した利益移転への対抗策で、源泉地における設立形態や収益などの税務上の性格を、移転先でも適用するという内容。ATAD2ではさらに一歩進め、利益の移転先がEU域外のケースも規制の対象となり、いかなるタイプのハイブリッド・ミスマッチも課税逃れの手段として利用できなくなる。