EUは25日開いた財務相理事会で、欧州銀行セクターの耐久力強化を目的とする金融規制改革案の内容で合意した。銀行が引き続き実体経済を支えることを担保しつつ、金融システムの安定に影響を及ぼすさまざまな課題に対処するため、銀行の自己資本と再生・破たん処理に関する合わせて4つの規制を改正し、欧州の特異性を考慮しながら金融危機の再発防止に向けた国際的な合意を法制化する。近く欧州議会と閣僚理事会の間で協議を開始し、最終合意を目指す。
欧州委員会が2016年11月に発表した金融規制改革案は、金融危機を受けてEUが13年に採択した欧州自己資本規則(CRR)および欧州自己資本指令(CRD)と、14年に採択した銀行再生・破綻処理指令(BRRD)および単一銀行破綻処理制度に関する規則(SRMR)の包括的な見直し案。
柱の1つは国際的な金融システム上重要な金融機関(G-SIIs)、またはEU域内で300億ユーロ以上の資産を保有するEU域外の大手銀行に対し、持ち株会社など(IPU)の設立を義務付けるルールの導入だ。大手外銀に対する監督体制を強化し、本国だけでなくEU域内にも十分な自己資本を確保させるのが狙いで、新ルールが導入されると対象となる銀行は新たに数十億ドル規模の資本が必要になるとの見方が出ている。
改革案にはこのほか、国際的に事業展開している銀行の健全性維持を目的とした自己資本規制の新たな枠組み「バーゼルⅢ」に基づき、EU域内に拠点を置く金融機関に対してレバレッジ比率3%の最低所要水準を設けることや、破綻処理が必要になった場合に備えて十分な損失吸収力(MREL)の確保を求めることなどが盛り込まれている。
MRELは金融安定理事会(FSB)の「TLAC」と同じ目的を持つ規制で、破綻時に株主や債権者に負担を求めるため、自己資本と劣後債などの債務の総額が、資産総額に対して一定の比率以上になるよう求めるもの。MRELは負債総額の最低8%に設定される見通しだが、ドイツはG-SIIsについて8%を「大幅に上回る水準」を求めており、欧州議会との協議で焦点の1つになりそうだ。