EUは7月31日開いた外相理事会で、ウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋の建設に関与した露企業6社を新たに制裁の対象に加える決定を下した。ロシアによる一方的なクリミア併合を受けた制裁措置を拡大し、EU域内における6社の全資産を凍結するほか、域内の企業や団体、個人による融資を禁止する。
問題の橋は、ウクライナを経由せずにロシアとクリミアを直接結ぶ輸送路として、プーチン政権が2016年に着工。5月に自動車道が開通し、鉄道橋は19年の完成を目指している。ロシアにとってはクリミア半島の実効支配を象徴するプロジェクトの1つだ。
新たな制裁対象には、プーチン大統領の柔道仲間で新興財閥のアルカディ・ローテンベルク氏が所有するガスパイプライン建設会社や交通インフラ整備会社などが含まれている。EUは対象企業が橋の建設に関与することで「違法に併合されたクリミア半島のロシアによる支配を強化する役割」を担い、「ウクライナの領土の一体性と主権、独立を脅かした」と非難している。
EUはロシアが2014年にクリミア半島を併合したことを受け、EU域内への渡航禁止や資産凍結、クリミア製品の輸入禁止、EU域内の企業および個人によるクリミアへの投資の禁止、輸送・通信・エネルギー分野のクリミア向け製品輸出および技術供与の禁止などの制裁を実施している。今回の決定により、制裁対象は44の企業・団体と、個人155人となった。
ロシア側はEUの決定に対し、クリミアでのインフラ整備を妨げるものだとして強く反発している。ロシア外務省のザハロワ報道官は「西側諸国はクリミアへのエネルギー供給を遮断しようとする人たちを奨励し、インフラ整備に携わる人々を追求している。これはクリミアの住民に対する破壊的な政策だ」と述べ、EUの対応を批判した。