欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は8月30日、欧州議会で米国との通商協議について進捗状況を報告し、通商政策をめぐる「深い溝」は埋まっていないとしたうえで、「もし米国が同じように対応するのであれば、EUは自動車関税をゼロにしてもよい」と述べた。自動車関税の撤廃も視野に交渉を進め、欧州委の任期が満了する2019年10月末までの合意を目指す考えを示している。
欧州委員会のユンケル委員長とトランプ米大統領は7月の首脳会談で、自動車を除く工業製品の関税や非関税障壁の撤廃に向けて交渉を開始することで合意した。トランプ氏は米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、EUが報復関税を発動したことを受け、欧州車に20%の関税をかけて再報復する構えをみせていたが、交渉中は自動車の追加関税を発動しない方針を示唆。双方は現在、高官級の作業部会を立ち上げて協議を進めている。
EUと米国は2013年、双方の貿易障壁や規制を包括的に見直す環大西洋貿易投資協定(TTIP)の締結を目指して交渉を開始した。双方は16年秋まで15回の交渉を重ねたが、トランプ政権の発足後、交渉は停止状態に陥っている。
マルムストローム委員は欧州議会の国際貿易委員会で「TTIP交渉は再開していない。現在協議している協定は関税分野だけの限定的な内容になる可能性がある」と説明した。
ブルームバーグによると、トランプ氏は欧州委が米側の対応によっては自動車関税を撤廃する意向を示したことについて、「十分ではない」と一蹴。さらに「EUは中国と同じくらい悪い。規模がやや小さいだけだ」と述べ、EUの通商政策に対し改めて不満を表明した。