伊が財政計画でEUに譲歩、20年から赤字削減へ

イタリアのコンテ首相は3日、財政赤字の削減を前倒しで進める意向を表明した。政府が先ごろ発表した経済財政計画で打ち出した「ばらまき政策」が、債務危機の再燃を招くとしてEUから批判をされていることを受けたもの。2020年から赤字削減に取り組む方針だ。

イタリアの政府債務はGDP比131%と、ユーロ圏でギリシャに次ぐ高水準にある。このため前政権は財政健全化を重要政策に掲げ、財政赤字を19年に国内総生産(GDP)比0.8%まで削減し、21年に黒字化するという目標を設定した。

しかし、6月に発足したポピュリズム(大衆迎合主義)政党「5つ星運動」と「同盟」の連立政権は反緊縮の立場で、9月末に発表した経済財政計画で19年から3年間の財政赤字をGDP比2.4%とすることを決定。赤字幅はEUの財政規律で上限となっているGDP比3%を下回るものの、財政再建が後退することになった。

このため、金融市場では債務危機を警戒し、イタリア長期国債の利回りが急上昇し、同国の株価も急落。EUからは政府の方針に批判的な声が相次いでいた。

EUはギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、ユーロ参加国の財政監視強化策として、13年から各国の予算案を欧州委が事前に審査する制度を導入しており、各国は次年度予算案を議会の承認に先立って毎年10月15日までに欧州委員会に提出し、審査を受けることが求められる。コンテ首相は今回の財政計画が欧州委の承認を取り付けることができず、見直しを迫られるのが必至なことから、譲歩が必要と判断。19年の赤字は予定通りGDP比2.4%とするものの、20年は2.1%、21年は1.8%に削減する方針を打ち出した。

新計画には同期間の予想成長率など、財政状況の把握に必要なデータは盛り込まれておらず、赤字削減が予定通り進むかどうかは不透明だ。それでも市場は政府がEUに歩み寄ったことを歓迎し、同日に国債利回りは急低下し、株価も回復した。

上部へスクロール