割増賃金の勤務時間帯に労働時間口座の貯蓄を消化、割増請求権はあるか

夜間、週末、祝日の勤務には当然ながら割増賃金が適用される。では、割増賃金が適用される時間帯にシフト勤務で投入されたものの、労働時間口座に貯まった残業時間(貯蓄)を消化するために当該時間帯の勤務を免除された被用者にも割増賃金は支払わなければならないのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が9月の判決(訴訟番号:10 AZR 496/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はDFSドイツ航空管制会社に勤務する管制官が同社を相手取って起こしたもの。同管制官は労働時間口座の貯蓄を消化するために2012年2月25日から14年4月25日にかけて計24回、勤務免除を申請し、すべて許可された。勤務免除は例外なく、割増賃金が適用される土曜日、日曜日、祝日、夜間のシフト勤務時間帯だった。

雇用主のDFSはこの時間帯分の賃金を支給したものの、そこには割り増し分が含まれていなかったことから、原告の同管制官は割り増し分も支給するよう要求して提訴した。

原告はその根拠として、労働時間口座の貯蓄を消化するための勤務免除申請が認められなければ当該時間帯に勤務する意思はあり、実際に勤務していたはずだと主張。DFSは勤務免除を自らの責任で最終決定したことで、労働力を提供しても良いという原告の申し出を受け入れなかったとして、DFSには割増賃金の支給義務があると訴えた。勤務免除を被用者が申請したのか、それとも雇用主が命じたのかは重要な問題でないとの立場だ。

原告は下級審で敗訴し、最終審のBAGでも判決は覆らなかった。判決理由でBAGの裁判官は、実際の勤務を行わなかった被用者に割増賃金を支給することは、夜間など通常の勤務時間に比べて負担の大きい時間帯に働いた苦労に報いるという割増賃金の趣旨に反するとの判断を示した。

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