独テレコムが調達方針見直し、中国勢排除も

2018年12月19日発行 No.1216号

電気通信大手のドイツテレコムは13日、「調達戦略を現在、見直している」ことを明らかにした。中国メーカーのネットワーク機器をめぐる「世界的な議論を深刻に受け止めている」ためと説明しており、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)の製品を締め出す可能性が出てきた。

中国の通信設備・端末メーカーに対しては製品に組み込んだ部品を通してスパイ活動を行っているとの批判がある。特に華為は非公開企業で事業活動に不透明な部分が多いことから中国政府・軍との関係が深いとみられており、オーストラリアとニュージーランドは次世代移動通信(5G)システムに同社製品を用いないことを決定。英通信大手BTは華為製品を5G通信網の主要部品に使用しないだけでなく、既存の基幹通信網からも取り除くことを今月上旬に明らかにした。日本の通信各社は華為とZTEの製品を通信インフラから排除するもようだ。

こうした動きの背景には両社製品を用いないよう米国政府が働きかけていることがある。

ドイツテレコムは華為の製品を通信インフラに多く用いている。これまでは華為製品にセキュリティ上の懸念はないとの見解を繰り返し表明。セキュリティ問題の統括責任者であるトーマス・チェルジヒ氏はメディアのインタビューで最近、ドイツテレコムが厳しいチェックを行っていることを指摘し、「我々に気づかれずにネットワーク部品が中国にデータを送信することはまずあり得ないことだ」と明言していた。

同社は態度をにわかに変えた理由を明らかにしていない。ドイツの第4世代通信(4G/LTE)網で主に華為製品を使用する競合の英ボーダフォンは、同社が用いるあらゆる製品は投入前に認証を受け、使用中も常に監視しているとして、セキュリティ上の懸念を改めて否定した。

独当局も中国製通信機器に問題があるとはみていない。連邦情報技術セキュリティ庁(BSI)のアルネ・シェーンボーム長官は週刊誌『シュピーゲル』に、「製品の使用禁止といった重大な決定を下すためには証拠が必要だ」と述べたうえで、そうした証拠をBSIは確認していないことを明らかにした。

また、製品のソースコードなどを顧客の通信サービス会社が検証するための施設をボンに開設し疑惑を晴らそうと努めている華為の姿勢を高く評価。他のメーカーも同様の施設を設置すべきだとの見解を示した。

ペーター・アルトマイヤー経済相は、通信など「重要なインフラに用いられる製品はすべてセキュリティが確保されていなければならない」と前置きしたうえで、そうした前提が満たされていればどのメーカーの通信機器を採用するかは通信サービス事業者の自由だと指摘。5G通信インフラへの華為製品投入に問題はないとの見解を示した。

見直し表明直後に米当局が合併承認

来春ドイツで実施予定の5G周波数帯入札への参加を検討するインターネットサービスプロバイダーのユナイテッド・インターネット(UI)はZTEと手を組んで5G網を構築する考えだ。UIは移動通信事業者(MNO)から回線を借りてサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)で、これまで通信網を保有・運営した実績がない。5G網を自力で構築するとリスクが大きいことから、ZTEに構築させたうえで、借り受けることを検討している。これに対し当局は懸念を表明していない。

独政府・当局の圧力がないにもかかわらず、ドイツテレコムが中国製品の投入見直し方針を打ち出した背景には、米移動通信子会社TモバイルUSがソフトバンクの米子会社スプリントとの合併を計画していることがある。米政府がスパイ活動を疑う中国通信機器メーカーの製品を同社が今後も使い続けると、合併審査で不利に働くためだ。ドイツテレコムが調達方針の見直しを表明した4日後の17日、TモバイルUSとスプリントは米国の対米外国投資委員会(CFIUS)が合併計画を承認したと発表した。

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