夫より大幅に若い寡婦への遺族年金支給、減額は違法な差別か

企業年金の受給資格がある夫ないし妻が死亡した場合、配偶者は基本的に遺族企業年金を受給できる。では死亡した被用者と配偶者の年齢差が一定水準以上の場合は受給額を減額するルールは一般平等待遇法(AGG)で禁じられた違法な差別に当たるのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が11日の判決(訴訟番号:3 AZR 400/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は1930年生まれの夫と66年に結婚した45年生まれの妻が夫の元勤務先を相手取って起こしたもの。妻は夫が死亡した2014年から、寡婦年金を受給したものの、金額は大幅に減額されていた。被告企業の企業年金規約には、(元)被用者の配偶者が夫(妻)より11年以上、若い場合は年齢差1年につき給付額を5%引き下げるというルールがあるためだ。

原告の寡婦はこれが不当な年齢差別を禁じたAGGに違反すると批判。満額支給を要求して提訴したものの、最終審のBAGは敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官は、死亡した被用者と配偶者の年齢差を理由に寡婦(寡夫)年金を減額することは年齢による直接的な差別に当たるとしながらも、企業の財務リスクを軽減するという雇用主の正当な利害を踏まえると必要かつ妥当な措置だと指摘した。また、年齢差が11歳以上の夫婦であれば寡婦(寡夫)が配偶者の死亡後も長く生きることを前提に生活を設計しており、遺族年金の減額はその意味でも妥当だとの判断を示した。

BAGは、死亡した被用者と配偶者の年齢差が一定水準以上の場合は企業年金を支給しないとするルールを巡る別の係争でも、同様の根拠に基づいて不支給を妥当とする判決を下している。

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