ECBが景気先行きへの警戒強化、総裁「リスクは下方に」

欧州中央銀行(ECB)が英国のEU離脱をめぐる混迷、米中貿易戦争を受けて、ユーロ圏経済の先行きへの警戒を強めている。ドラギ総裁は24日に開いた定例政策理事会後の記者会見で、「リスクは下方に動いた」と発言。必要に応じて追加の金融緩和策を講じる用意があることを明らかにした。

ドラギ総裁は12月、ユーロ圏では景気の下振れリスクが強まっているとの認識を示したものの、リスクは「概ねバランスが取れている」と述べていた。今回は英のEU離脱問題や米中貿易摩擦の激化、中国経済の失速といった不安材料があることに言及し、「下方に動いた」と警戒のトーンを強めた。

ユーロ圏は景気の緩やかな回復が続いているものの、2018年7~9月期の域内総生産(GDP)伸び率は前期比0.2%と、前の2四半期の0.4%から縮小。インフレ率もECBが目標とする水準を割り込んでいる。11月の鉱工業生産指数は、ドイツが新車販売の低迷で不振だったことなどから前月比1.7%低下と、マイナスに転落しており、10~12月期の成長率がさらに鈍化する可能性が高まっている。

量的金融緩和を12月末で打ち切ったECBは、超低金利を少なくとも2019年夏まで継続することを言明しているが、市場は景気の雲行きが怪しくなったことで、利上げが20年以降になるのは確実との見方で一致している。

ドラギ総裁は記者会見で、ECBは量的緩和を終了したが、「我々には多くの手段があり、それらを使う用意がある」と述べ、量的緩和で購入したユーロ圏の国債を放出せず、保有し続けることを確認。今回の理事会で、銀行に低利の長期資金を供給するオペレーションの実施の可否が話題に上ったことを明らかにし、ECBが14年から17年にかけて実施した「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に、長期資金を供給するオペ)の実施を視野に入れていることを示唆した。

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