欧州委員会は12日、中国の経済力や政治的影響力の高まりを背景に、対中戦略の見直しに向けた10項目の行動計画を発表した。今月21~22日にブリュッセルで開く欧州連合(EU)首脳会議で、対中関係の強化を掲げた2016年の「対中戦略に関するEU理事会決定」の見直しを協議する。
欧州委はEU外務・安全保障政策上級代表と共同でまとめた加盟国への通達で、中国は「EUと競合する存在」だと指摘。ドイツやフランスを中心に、インフラやハイテクなど戦略的に重要な産業分野への中国企業による投資拡大を警戒する声が高まっている一方で、東欧諸国などは中国からの投資を歓迎している現状を踏まえ、対中外交で「EU加盟国の完全な結束が不可欠だ」と強調。加盟国が特定のプロジェクトを中国側と共同で進める場合などは、EUの基準やルールを順守しなければならないとくぎを刺した。
行動計画では気候変動対策やイラン核合意などでEUと中国の協力が重要と指摘する一方、貿易や投資分野では中国側に国際ルールの順守を求める必要があると強調。国営企業や国家補助による市場歪曲を排除するため、欧州委が年内に現行ルールの課題をまとめる方針を示した。
一方、デジタルインフラに対する潜在的リスクに対応するため、次世代通信規格の第5世代(5G)移動通信システムに関しては、EU共通のサイバーセキュリティ政策を策定する必要があると説明。首脳会議の議論を踏まえて欧州委が加盟国への勧告をまとめる方針を表明した。また、米政府がEU加盟国に中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の排除を迫っていることを背景に、5Gネットワークへの外国製品の使用は「EUの安全保障を危険にさらす可能性がある」と警告した。