「合意なき離脱」なら独GDP0.3%低下 英は住民1人当たり875ユーロの減収に

英国が新協定を締結せずに欧州連合(EU)から離脱すると、英国だけでなくEUに残留する国も大きな痛手を受ける――。独ベルテルスマン財団は21日に公開した調査レポートでそうした見方を示し、「合意なき離脱」を是が非でも避けるよう英国政府とEUの交渉当事者に強く呼びかけた。英国は早ければ4月12日に合意なき離脱を行う可能性がある。

同レポートによると、合意なき離脱が起きた場合、英国は総収入が年570億ユーロ減少し、最大の痛手を受ける。住民1人当たりに換算して875ユーロに達する計算だ。

英国に次いでダメージが大きいのはドイツで、総額は約100億ユーロに上る。これは国内総生産(GDP)の約0.3%に相当する規模で、住民1人当たりでも115ユーロと大きい。3位はフランス(総額80億ユーロ)、4位はイタリア(40億ユーロ)となっている。

これらの損失はこれまで無関税だった輸入品に対する関税の適用、および物価と賃金への悪影響に伴う競争力の低下が原因でもたらされる。

ドイツが受ける影響は地域によって異なる。最大のしわ寄せを受けるのはノルトライン・ヴェストファーレン州。英国への輸出比率が高いことが響く。また、バイエルン州や、中小企業の割合が高いシュツットガルト圏、ハンブルク、ラインラントも痛手が大きい。

レポートの共同作成者であるドミニク・ポナットゥ氏は、英・EU間の関税導入で欧州の物価が上昇すると、欧州域外との取引の魅力が高まるため、米国や中国は漁夫の利を得るとの見方を示した。

英国が新協定を締結してEUを離脱した場合は、経済的な損失が大幅に少なくなる。ドイツは約半分の50億ユーロ、EU全体でも220億ユーロにとどまると同財団は試算している。

英国のEU離脱は当初、3月29日となっていた。だが、EUは21日の首脳会議で、離脱延期で合意。英国議会が離脱協定案を次週に可決すれば、5月22日まで延期する。否決された場合も4月12日まで延期することから、29日に「合意なき離脱」に至る事態は回避される見通しとなった。

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