スイスの重電大手ABBは17日、ウルリッヒ・シュピースホーファー最高経営責任者(CEO)が同日付で退任したと発表した。ABBは退任の理由を明らかにしていないが、同社の株価は低迷しており、利益率の改善を求める株主からの圧力が強まっていた。
ABBによると、シュピースホーファー氏の退任は「相互の合意」によるもので、後任が決まるまでピーター・ボーザー会長が暫定CEOを務める。ボーザー氏は「シュピースホーファー氏のリーダーシップの下、ABBはデジタル変革が進む産業界で世界有数のテクノロジー企業に転換した。シュピースホーファー氏はABBを戦略的に再構築し、全ての事業分野で成長を加速させた」と説明。そのうえで「ここ数年の業績をみると、競争環境の中でわれわれが望むポジションではない」と述べ、経営戦略の実現を目指して「未来に目を向ける時がきた」と強調した。
シュピースホーファー氏は2013年にCEOに就任し、ロボット事業や電気自動車向け充電インフラなどの成長分野を重点的に強化。昨年12月には送配電などのパワーグリッド事業を日立製作所に売却することを決め、従来のマトリクス構造を廃止して事業を4部門に再編する計画を打ち出した。しかし、投資家の信頼を回復することはできずに株価は下落傾向をたどり、アクティビスト(物言う株主)のセビアン・キャピタルなどから経営のスリム化を求める声が高まっていた。