50年の温室効果ガス「実質ゼロ」、東欧諸国の反対で合意できず

EUは20日開いた首脳会議で、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標について協議した。大半の加盟国は支持を表明したが、化石燃料への依存度が高いポーランドなど東欧諸国が強く反対し、合意に至らなかった。

20年以降の温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の適用開始を控え、欧州ではすでにフランスやドイツが50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。英国も今月に入り、同目標の達成に向けて関連法を改正する方針を打ち出した。パリ協定は世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満とし、1.5度未満に抑える努力目標も設定。そのため今世紀後半に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることも求めている。

50年までの排出ゼロをEUの目標とする案はマクロン仏大統領が提唱し、メルケル独首相などが支持を表明している。EU筋によると、首脳会議ではEU28カ国のうち24カ国がこの目標に同意。これに対し、ポーランド、ハンガリー、チェコ、エストニアの4カ国が反対の姿勢を崩さず、合意することができなかった。脱炭素社会への転換には巨額投資が必要なため、自国産業や雇用に悪影響が及ぶことを懸念したものとみられる。

欧米メディアによると、合意文書の草案は50年の排出ゼロ達成に向け、欧州委員会や閣僚理事会に具体的な取り組みを促す内容だった。しかし、最終的に「EUとしての排出ゼロへの移行はパリ協定に沿っている」との文言にとどめ、具体的な期限には言及していない。

上部へスクロール