欧州委員会は6月27日、キヤノンが東芝メディカルシステムズを買収した際、EU競争法が定める買収ルールに違反したとして、2,800万ユーロの制裁金支払いを命じたと発表した。キヤノンは同決定を不服として、提訴する方針だ。
キヤノンは2016年3月、東芝メディカルシステムズを6,655億円で買収する契約を結んだ。通常は関係当局に承認されてから買収手続きを完了させるが、東芝メディカルシステムズの親会社である東芝が財務悪化で売却益を早く手にする必要があったため、キヤノンは特別な仕組みを設けて、2段階で買収を進めた。まず、キヤノンが東芝メディカルシステムズの新株予約権を取得し、即座に買収額を東芝に支払う。その後にキヤノンは買収計画を当局に申請し、承認後に新株予約権を行使して株式を取得するというものだ。
キヤノンは16年8月に買収認可を欧州委に申請し、同年9月に承認された。しかし、欧州委は申請、承認に先立つ第1段階の時点で実質的に買収が行われたと判断。調査を進めた結果、買収の可否をめぐる審査を終えてから取引を成立させることを義務付けるルールに違反したと結論付け、制裁に踏み切った。
キヤノンは同日に発表した声明で、「欧州委の判断は根拠となる先例を欠く」などとして、今回の決定を批判。EU司法裁判所に提訴する意向を表明した。